フロイト研究で知られるベルギー在住のフランス人女性精神分析学者フレムの大ベストセラーです。本書は、作者自身が父に続いて母を失った時の実体験での心情を赤裸々に綴った内省の記録です。
親を失った悲しみを乗り越えて徐々に折り合いをつけて行く事、遺言状が無い為に、親が残した財産を自分が受け取る事を望んでいたかどうか確かめる術がない事。親から残された物は、何も無いのも辛いが、ありすぎるのも子供にとっては辛い事。そして作者の場合、両親がアウシュビッツを経験して奇跡的に生き残った重い事実を遺品が語ってくれる。生前は苦しくて辛すぎるからと両親が黙して語らなかった事実に改めて向かい合う。多くの「物」の処分に悩み苦しみながら決断を下して行く事。喪に服すという事は、感情を殺して悲しみに沈むだけでは無く、時に攻撃的になって怒りをも呼び起こしてしまう。しかし、それは誰もが通り抜けなければならない試練で、一方で人間を強くする機会をも与えてくれる大切な場なのだ。人生には悲しみもあれば、喜びもあってずっと続いて行く。
それぞれ生まれたお国は違っても、ここに描かれる感情は人として大事な共通項を含んでいます。だからこそ、本書が世界中の12の国で翻訳され共感を得ているのでしょう。本書は、幾ら時代が変わっても、私たちが守り続けなければならない大切なことがあると改めて教えてくれる、心と魂に訴えかける貴重な一冊だと思います。