前著「親の家を片づけながら」が本国フランスで大ベストセラーとなり世界12カ国語にも翻訳されて好評を博した精神分析学者フレムの話題のシリーズ続編です。著者曰く、親の家を片づけ、それが如何に大変な試練だったのかを文章に綴った前作から、それでもまだ長い月日、喪の悲しみにつきまとわれ、いつまで経っても親の事が恋しく探して追いすがろうとする気持ちが続き、両親が書いた八百通近い往復書簡を読んでふたりの存在を身近に感じようという思いが本書を書かせました。偶然の出会いから始まった両親の恋愛はすぐにお互いを運命的なパートナーだと確信させ、母の難病を一緒に闘うふたりの互いを思い気遣う気持ちが温かく生き生きとしたロマンチックなラブレターを綴らせて行きます。私は著者の父が男として女性に弱味を見せる事を恐れずに、幼い頃の自分が寂しく心細かった時の心情を恋人に素直に打明ける手紙に感動を覚えました。どんなに平凡でささやかな人生でも人それぞれにドラマチックな要素は必ずあるのだと思います。著者の両親が生きた歴史の物語と人生模様は、読者に自分自身の両親の人生はどんな風だったのだろうと興味を抱かせるきっかけになるでしょう。著者は精神分析学者という職業柄か、精神の奥襞に細部まで分け入って感情に溺れず冷静に分析する姿勢を貫きます。決して曖昧なままで満足せずに永遠に辿り着けない真実を究めようとする態度は時に完全主義者の冷たさを感じさせますが、私は「父や母、愛しい人の死を完全に受け入れられる日は来るの?」と永遠に自問し続ける著者の愛情深い感性を信じて支持したいです。そして一番最後に語られるウサギの寓話は本当は真実ではないかも知れないけれど、そう信じようとした著者の心情は理解できる気がするのです。