記憶に関する基本的な研究成果と知見を紹介した書。エビングハウスの実験からモリスの水迷路などをこれまでに報告されてきた記憶に関する論文を、50ページ程度で紹介している。文語的な記述中心で、難しいグラフもなく、中高生以上であれば1時間で読破可能。
講義1回分程度で入門書程度の基本的な内容であるため、推奨度は低い。ほとんどが1960-70年代の研究結果で有名なものばかりであるため、ウェブサイトで十分検索可能である。本書の値段を考慮すると、数百円高価な池谷裕二氏の『進化しすぎた脳』や『記憶力を強くする』に、本書の内容がほぼ網羅され、かつ最新の研究結果がわかりやすく紹介されている。最後に述べられているマグワイアの研究結果(fMRIによるタクシー運転手の脳の解析)は、他の書では序章に記載されている内容だ。
記憶に関する基本中の基本事項を学ぶことに異論はないが、古いものばかりで、他の書と比較しての優位性が見あたらない。2000年に紹介されたマグワイアの研究以降、数年間で脳科学は飛躍的に発展しており、2007年に初版となる学術書でこれを全く紹介しないのはどうかと思う。とくに、副題である『覚えたことがなぜ思い出せなくなるのだろう』の問いには、最近の研究結果を紹介することが必須と思う。星3つの評価は悪書ではないことに起因するが、推奨度は実質2.5くらいで、脳科学を学ぶなら他の書を勧める。