「生物図録」「化学図録」が素晴しかったので、こちらも買った。どのページも色鮮やかで、工夫されたイラストやグラフが満載。開いて眺めてページをめくっているだけでも楽しい。視覚的に興味を沸き立たせると同時に、本来目に見えにくいものをうまく理解させるために、とてもよく考えて構成されてている。
この「物理図録」独自の工夫としては、CD-ROMに収められた映像がある。宇宙ステーション内の無重力空間で毛利さんたちが互いを突き合っている映像や、簡単ではあるけれど核分裂の動くイラストなどの映像は、物理の理解に役立つと思う。
また、それぞれの物理法則が、実用面でどのようなところで役に立つのかについてかなり意識して書いてあるように思う。勉強なんて何の役に立つの?と思いがちな多くの人たちにちゃんと配慮したまとめ方で、またその方が理解しやすいという意味でも、大変良い編集方針だと思う。
ひとつだけ不満があるのは、物理用語の英語での表記説明がないこと。「化学図録」と「生物図録」では、載せ方はそれぞれ違うものの、ちゃんと英語での用語もわかるようになっていたから、この点はとても残念だ。世界的な物理学者の米沢富美子さんによると「物理学の研究を進める際には、物理と同じくらい英語は必須です。私が読む論文の99%は英語で、書く論文はすべて英語です」という時代なのだから(岩波新書「英語とわたし」より)。
最後に、科学的な書籍に対してこういうコメントは失礼かもしれないが、内容の充実度から比較して考えると、本書のシリーズはかなりお買い得である。大して中身のない新書や文庫でさえ700円を超えるものがそう珍しくなくなった時代、BlueBacksは1,000円越えが当たり前、Newton別冊は2000円台という時代に、総天然色で、イラストや写真満載の内容で、CD-ROMもついて、良質な複数の研究者のコラムも入って、紙質も良くて、付録部分もさりげなく充実していて、この値段は本当に安い。分厚くないから場所もとらない。半端な図鑑類を買うより、よほどお勧めである。