昭和38年に出版された、中学国語の副読本を復刊したものです。
現在ならば、高校現代国語レベルの内容といってもいいでしょう。
レイアウトが見やすく解説や図版も豊富で、パラパラと眺めるだけでも楽しい内容となっています。
本書の作品選定と解説は保田与重郎、挿画とカットは棟方志功、そして監修の佐藤春夫も (名義貸しではなく) いくつかの作品に鑑賞のてびきを寄せています。
編纂者の保田与重郎は、戦前戦中の戦争擁護発言が問題視され、戦後しばらく論壇から干されていますが、本書を眺めてみるだけでも、その批評眼の一端を垣間見ることができます。
近年、この編者の著作が再評価されつつあるのも当然といえるでしょう。
本書では、多分野からさまざまな文章を収録し、国語をとおして日本の文化や歴史にも触れられる内容となっています。
それぞれ活躍する場は異なっていても、深い学識や経験、そして鋭い感性によって記された文章には、どれも深い味わいがあります。
出雲での日常を、おだやかで美しい文章でつづった、河井寛次郎 (陶芸家) 『
火の誓い』 から 「過ぎ去った今」。
奈良での印象的な出会いと再会を記した、エルヴィン・ベルツ (医学博士) 『
ベルツの日記』 より 「奈良日記」。
芥川龍之介の小説を批判した、萩原朔太郎の文章 「文芸における道徳性の本質」。
明治25年、ベルリンから釜山まで、馬でユーラシア大陸を単独横断した記録、福島安正 「単騎遠征」。
万延元年 (1860年) の遣米使節団に同行した役人、村垣淡路守範正の記した 「航海日記」。
このほかにも、佐藤春夫 「日本語の美しさ」、芭蕉 「行春」、長谷川如是閑 「暮らしと文明」、大伴家持「立山の賦」、内村鑑三 「中江藤樹」、島崎藤村 「夜明け前」、森鴎外 「阿部一族」 などが収録されています。