死や失踪など、「社会からの消失」を扱った短編集。
それぞれの話には劇的な展開があるわけでもなく、静かに、
そして淡々と話は進んでいく。それなのに知らず知らず
引き込まれていくのは、各話が扱っている「社会からの消失」が、
身近に十分起こりうる内容だからだろう。本格推理モノにあるような
非日常的な内容(それはそれで面白いし、嫌いでもないが)からは
遠い距離にあるからだと思われる。普遍的な死と、そこに関わる人々。
人間の悲哀を感じる事が出来る作品集だ。
吉村昭さんの静かな文体が各話の雰囲気を一層引き立てている。
個人的には「消えた町」という一編が印象に残った。
因みにラストに収められている「夜の道」という作品は吉村さんが
大学生であった25歳の時に大学の文芸部の機関紙に書いた小説だそうだ。