勤めていた出版社を辞め、妻の代わりに家事をこなしながら日々を送る主人公、昂一。ある日、妻の親友である由香里と肉体関係を持ったことから、昂一は奇妙な事態に巻き込まれていく。由香里の持つ特殊な「力」や、常識では説明できない出来事の数々。その疑問を解くため向かった土地で、昂一が探し当てたのは、由香里の不幸な生い立ちと、妻の知られざる少女時代の姿だった。
本書の核となっているのは、妻と由香里の長年に渡る愛憎入り交じった関係である。双方の家族をも含めた、切っても切れない絆を描くことで、著者は人間同士の繋がりの強さと脆さを表現してみせる。全編を通して登場人物の喜怒哀楽が細やかにつづられており、超常現象という題材を扱いながらも、決して突飛な印象はない。いくつもの謎が仕掛けられた物語に引き込まれるうちに、主人公と共に、読者自身も大きなテーマについて考えさせられるだろう。(砂塚洋美) --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。
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