率直に言うと本書は読んでいてものすごく感銘を受けるとか、感動して泣けるとかはありません。もっと言えば読み物としては著者の日記を読んでいるようでとくに抑揚がある訳でもなく、内容に引き込まれる事もありません。あくまで淡々と著者の幼い頃からの回想と視力を失う難病「錐体桿体機能不全」の宣告を受けてから起こった事や取り組んできた事が書かれています。
しかしながら読了後なにかものすごく勇気づけられるというか、なにかじっとしてられない感じがしてきます。それはこの淡々と綴られている出来事が視力健常者であってもとても大変なことなのに、著者はまるでこの病気を自分の強みのように感じているのではないかと錯覚するほどの行動力で新しい事を次々と切り開いてゆく様が私たちにとってうらやましいからなのでしょう。明らかな逆境をものともせず、前だけを見て進む著者の様を本書を読んで触れる事で生きる力が湧いてきます。最終章で初めて著者の経験から学んだ教訓らしきものがでてきますが、そこで初めて著者がどれだけ精神的にも肉体的にも苦労されたということが垣間見え、この淡々と語られてる事はあくまで著者が前を向いて進んでいるからこそなのでしょう。
人としてどう生きるかという課題に対しては障害者と健常者というステレオタイプの見方がすでに何の意味も持っていないということを本書を読んで強く感じました。視覚障害者の方がここまでやっているという事に勇気づけられるというよりも、人生に対する取り組み方を教えてもらった気がします。気軽に読めるわりに感じる事は大きいのでお勧めします。