近年日本人によって書かれたアメリカ論としては出色の位置を得るであろう本書は、「日本からはわからない」のみならず、アメリカ人でも属する社会階層とコミュニティとの関係で、アメリカの民族的、宗教的、歴史的そして最後には政治的な圏域で働いている力学を精確に理解できる人は少ない。その典型は、ハンチントンが書いた「分断された国家(Who are we?)」での人口統計的分析ですら、サム・リチャーズ(ニューヨーク・タイムズ論説委員)が著書「Who are we, now?(未邦訳)」で反証したとおり定量的な要因よりも上述した定性的な要因の方が、はるかに大きな社会を動かす力となっているからだ。その収斂先として政治の党派性を、ヒラリー・クリントン上院議員の選挙活動に参加することで、アメリカの内政世論が如何に形成されているかを具に観察、実感した経験に基づいて書かれた著書が本書である。ハンチントンのような知識人であれ、アメリカの政治風土を精確に分析することが難しい背景には、人種のサラダボールと言われるニューヨーク(使われている言語が150を超える地域)から、北東部メーン州のように98%が白人で構成されるような地域まで、アメリカは実に多岐に渡り、20世紀前半の移民の大半がヨーロッパ出身で、旧教から新教のみならずユダヤ教、共産主義者からKGBのエリートまでありとあらゆる人々が住み着いているのはアメリカであり、アフリカ系、アジア系などさらに地域ゲットー(コミュニティ)を作り、近年ではゲイティッド・コミュニティに発展している。こうした複雑に絡み合う政治イデオロギー形成がどのように為されたかを分析したのは本書であり、実にわかりやすい。アメリカに移住、あるいは長期滞在(駐在・留学)される方、必読の一冊です。これはアメリカ人にも書けないのは、上述のとおり。