恐怖をあおる話題には事欠かないが、しかし、ウイルスの実態はあまり正確には理解されていない。ウイルスとは何かを易しく、深く理解できるのが本書だ。例えばウイルスの大きな特徴である、動物に感染する際の多彩で巧みな戦略については、感染パターンごとにわかりやすく述べている。
しかし本書の内容は科学的な側面だけに限られない。ウイルスやウイルス病が社会的にどう扱われてきたかも細かく著述されている。
例えばHIVについて。潜伏期間が長過ぎることなどを根拠に、ウイルス学者のピーター・デューズバーグは「HIVとエイズとは無関係」と主張していた。一部のマスコミもこの説を支持したため、HIV感染患者の中にも信じる人がいたという。この説の流布によって「患者が治療機会を失った可能性もある」と著者は嘆く。まさかと思うような話だが、この「無関係説」は今でも、途上国の役人がエイズ蔓延について責任逃れの方便として使っている、と著者は指摘する。
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