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上巻の後半から下巻の後半まで、ほぼ5分の3を小牧・長久手の戦いとその前後に費やしており、両決戦の詳細が非常によくわかるようになっている。
この作品は家康と三河の武士団の性格を詳述することで、この性格が後年の江戸武士、更には現在の日本人の性格の原型になったのだということを知らしめてくれる。
日本人的性格の良い点も悪い点も、その極端な例をこの作品の中に見る事ができる。
本作を読むと、徳川体制が自分たち日本人に与えた後天的な影響が計り知れないほど大きいということがよくわかります。閉鎖的な体質、儒教的道徳観念などといった現代まで続く日本人の性格や特徴のほとんどが徳川体制によって植えつけられたものであったことを知り、驚きを持って読み進みました。
既に徳川体制の崩壊から百五十年の月日を経て、ここ最近は個々の才覚や野望が評価される実力主義の時代になってきています。そんな中でも、無意識ながら日本人には徳川的な性格・価値観は根強く残されており、そしてそれは今後も数百年の永きに渡って自分たちの中で生き続けていくものだと思います。
司馬遼太郎が「現代日本人の祖」とも言える家康をこうした形で描いたのは、そのルーツをよく知ることによって日本国家、民族の更なる飛躍を期待した、という点が濃厚にあると思います。逆に小説としての娯楽性はほぼ皆無で、司馬作品の定番である女性もほとんど登場せず、登場したとしても政治の要素としてのみ描かれるほど。全編を通してかなり硬派(?)で地味な内容ですが、司馬遼太郎の懐の深さを改めて感じることができる一冊でした。
なお、本作では家康が今川の人質として過ごした幼少期から小牧長久手での秀吉との戦いまでを描いており、関ヶ原や大坂の陣についてはまったく触れていません。"関ヶ原"、"城塞"などとあわせて読むことでより一層楽しめて、知識を深められると思います。
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