大手シンクタンク社員で執筆・翻訳活動も行っている山形浩生氏の著書。2000年前後に様々な雑誌やサイトに掲載されたエッセイ(雑文と表現されている)を収載した物。口語による文体で、話題ごとに2〜10ページ程度で持論を述べている。320ページ程度の分量で、所々にややわかりづらい部分もあるが、数時間で読破可能な内容で、広い読者が対象。
東大卒で多くの書を読んでいる著者が、次から次へと頭に浮かんだ表現をことをそのまま文章にしたようなエッセイで、頭の回転が速い人のマシンガントークを聞くような印象を受ける。述べている内容は、数年前に記載されたものであるが、時代を先取りする内容であったため、当時はあまり受け入れられていない反面、今読むと意外と予測が当たっているものもあって面白い。検索エンジンについてや電力供給の裏側、個人情報についてなどジャンルを問わず述べられているが、IT関係の情報が多い。コミュニティーの存在意義など、著者の主張はもっともな部分が多い。しかし、思いつきをそのまま記述された文体が、時に喧嘩腰に見えたり、日本語として意味が不明であったりする部分が目につくので、この点では本著者は非常に損をしていると思う。また、冗談なのか本気なのかが判別しづらく、的を射ていない部分の評価が困難である。敢えてこの文体で記述している点を同氏が開き直って述べていて、確かに一気に読めるという点では読者のハードルは下げられているかもしれないが、逆にせっかくのいい意見を受け容れがたくさせる表現でもあるように感じる。同氏の翻訳本でも表現の稚拙さが多く指摘されている。
個人的には同氏の意見の多くには賛成である。もう少し文章を工夫すれば、もっと面白く、いい書になると思う。星4つの評価。