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西行論 (講談社文芸文庫)
 
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西行論 (講談社文芸文庫) [文庫]

吉本 隆明 , 月村 敏行
5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容説明

『吉本隆明全集撰』書下ろし西行論を文庫化若年のある時、個人的な不明な動機で突然出家し、歌を通してしか思想を語らなかった「西行とはなにものであったか」。強靭な論理と豊潤な感性で鋭く迫る待望の書

内容(「BOOK」データベースより)

若年のある時、在俗の名門武士が不明の動機で出家遁世した。真言浄土の思想に動かされながら、同時代の捨て聖たちと対照的な生きざまを辿り、詩歌を通じてしか、いっさいの思想を語らなかった。―西行とは何ものであったか。豊潤な感性と強靭な論理で見事に展開する西行論。「僧形論」「武門論」「歌人論」の三部構成で西行の〈実像〉に鋭く迫る。

登録情報

  • 文庫: 310ページ
  • 出版社: 講談社 (1990/2/5)
  • 言語 日本語
  • ISBN-10: 4061960695
  • ISBN-13: 978-4061960695
  • 発売日: 1990/2/5
  • 商品の寸法: 15 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.5  レビューをすべて見る (2件のカスタマーレビュー)
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形式:文庫
[ASIN:4061960695 西行論 (講談社文芸文庫)] 西行は古来最も敬愛されてきた歌人の一人、繊細な心と大胆な行動で知られ、さまざまの伝説を生みました。幽艶にして雄渾な歌いぶりと謎めいた人物像が、今も多くの人々を惹きつけています。
 伝記資料が乏しい西行の人間像を描き出すために、吉本氏の設定している視点は二つ。
 一つは、現存する歌を重要な資料として、その綿密周到な解釈を通じて和歌の伝統に西行を位置づけるとともに、その人間像に迫ること。もう一つは数多い伝説の中から、西行の歌との関係で最も信憑性の高いものを特定し、当時の歴史的諸条件と関連づけながら、武門を捨てて出家した僧形の歌詠み西行の屈折した内面を浮き彫りにすること。氏の論の進め方が「僧形論」「武門論」「歌人論」という三部立てになっているゆえんです。
 ここで問われる主な問題は以下の通りですが、なかでも重要なのは問題の4です。これを明らかにする準備作業として問題1-3が設定されていると言えます。
1.西行が富裕な武門に生まれた北面の武士でありながら、出家したのはなぜか。
2.武家の世俗の歌詠みであった者が、出家後も歌を詠みつづけたのはなぜか。
3.出家は浄土思想の「前衛的」実践であったが、他の出家者と異なるどういう生き方が西行に
 認められるか。
4.出家後の彼における真言浄土に対する〈信〉と〈歌〉との関係をどのように捉えるべきか。
 また僧形である彼の〈歌〉は、同時代の他の歌人に対してどういう独自性を示しているか。

 平清盛と同年生まれの西行が生きた時代は、武士団の勢力が台頭し中央政権に介入し始めた時期に重なっており、朝廷の政治権力をめぐる貴族たちの抗争が、武士団を巻きこみ、やがて血なまぐさい合戦になることは避けられず、それが彼に出家を決意させたかなり有力な理由であろうと考えられます。当時、在俗者の出家遁世はけっしてめずらしいことではなく、その多くは草庵に独居して来世の浄福を願い、自然死に近い形で生を全うしましたが、西行の出家はその理念の典型とみなされました(歌人にして前代未聞のたくさんの伝説がまとわりついたゆえんです)。
 ところが彼の真面目は、僧形として意表をつく行動と生活に現れた、と吉本氏は言います。遁世者でありながら、「かくれて棲まぬひと」であり、都の周辺にたえず姿を現し、僧でありながら歌詠みを仏道修行のたよりとする境涯をあえて選んだからです。しかもその初期にあっては、なお武門の倫理を守って、かつて仕えた鳥羽法皇と崇徳上皇が対立関係になった後も、歌によって両者に「忠」と「義」の礼を尽くし、やがて僧門の倫理に従い両者の「あさましさ」を難ずるに到ります。この一事に典型的に示されているように、彼は出家後も世捨て人にはならず、つねに〈世にある〉と〈世にない〉の境に立ちつづけ、その位置から見える「現実」を詠歌の重要な題材にしました。
 他の出家者と異なる西行のもう一つの独自性は、〈厭離穢土〉〈欣求浄土〉という浄土門の修行の定型にとらわれず、捨てがたい現世の苦しみと喜びを生ききるという信仰態度であり、したがって歌の秀作は、抹香臭い釈教歌ではなく、自然の景物に即して「心」の揺れ定まらぬ動きを鮮やかに示す詠歌にあることです。吉本氏の西行像のかなめはここにあります。すなわち、浄土への参入を願う気持ちはもちろん強かったけれども、それにもまして彼の「心」を惹きつけたのは現世における自然の霊妙な生命の摂理であり、それに感応して揺れ動くおのれ自身の「心」の不思議でした。それに忠実であることによって、〈古今的〉〈新古今的〉和歌の風土の中で育ちながら、彼の歌は言葉の新しい響きを獲得しました。

 吉本氏は歴史が人間を作る場合の条件を重視すると同時に、ここに描かれた西行がそうであるように、一人の人間が逆に紛うかたない生命の刻印を歴史に刻む経緯を、「心」「身」「世」などの歌語に対して西行が彼自身の経験によって切り開いた新しい意味と響きの奥行きによって検証していると言えましょう。氏自身が丹念な歌の分析によってそれを発見しえた喜びが、本書から伝わってきます。
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形式:文庫
吉本が、人物についての評伝を書く場合、どのように描くのか?
その描き方が、典型的に表れているのが、この西行論のように思える。
吉本は、その人物がどのような生涯を送ったかということより、どのようなことを考えていたか、ということに興味があるようだ。
吉本は、僧形、武門、歌人、という3つの視点から、西行の思想について、この書で論じている。
冒頭で、西行を知るための資料として、『山家集』を除いては『撰集抄』をおいて他にない、と言っているのも吉本らしい。
『撰集抄』は、今日では、西行の作品でないことがわかっているが、吉本は、西行の思想がこの書にもっともよく現れているという。
部門論では、当時の時代に現れた、新しい武士という階級の人々が、どのような精神構造をもっていたかを中心に論じている。
やはり、一番興味深いのは、最後の歌人論。自ら詩人でもある吉本が、西行の和歌について、詳細に論じていて、読み応えがある。
特に、西行が『心』と『世』ということばを、どのように和歌の中で使っているかの分析が見事。
しかし、この書を読み終わってみて、吉本がこの書で論じた内容が、西行の思想であったのか、あるいは吉本自身の思想であったのか、よくわからなくなってしまった。
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