西行をよく知らないので何か読みたい、著名な作家さんが書かれた本もあるようだけだけど、作家の主観の入っていない西行を読みたいと思っていた時に見つけたのが本書でした。
しかし、実際に読み始めてみると本書は鎌倉時代に世間に流布する西行伝承や残された和歌を元に構成されたお話=作り物語で、必ずしも事実と一致するものではないことがわかりました。あくまでフィクションだったのです。
本書の構成は適当な段落で原文を区切り、その後に現代語訳・訳注・観賞と称する解説が付されています。個人的には古典を読むときは高校の古文の勉強ではないので少々わからないところがあっても読み流し、作品の気分というか雰囲気を感じとるようにしているので、本書の構成だと本来まどろっこしいところですが、本書についてはこの構成のおかげで助かりました。「この部分は事実と違う」とか「本来詠まれた歌のシチュエーションではないが原作者が再構成している」といった、丁寧な解説が事実認識に導いてくれるからです。
原作者は仏教者としてそして風雅の人としての西行を描こうとしたようですが、原文だけでそれが伝わりきれているとは言い難い。あくまで西行を主人公とする物語=フィクションとして読む本です。
原作だけで評価するなら、星3つからせいぜい3.5といったところでしょうが、訳注者のきめ細かい解説に敬意を表して星4つとさせて頂きます。