いろいろと独自の色づけもなされているが、現代思想研究者による「西田哲学入門」の書物とみてよいと思う。キー・ワードごとに、ほぼ西田の思想・哲学の変遷にそうかたちでその意味するところが説かれている。
著者には無礼になるが、内容をあえておおまかにトレースすれば、「純粋経験」の思考を深めていったのはよいがそれを「自覚」するための空間である「場所」の臨界点としての「絶対無」の位置づけをめぐって行き詰まり、田辺元による批判や自己の徹底的な反省もあって、「行為的直観」という個体に内在しつつ超越しつづけるための生成論的な認識を進化させながら「絶対矛盾的自己同一」というあの有名な世界理解の視点と方法に到達する、といった趣旨である。前半がベルクソン、後半がドゥルーズに近い思考スタイルであるとして対比的に論じられる。
「難解」で知られる西田哲学も大分わかりやすく整理できるようになってきたのだなあ、という感想をもった。日本における思想・哲学研究の発展のたまものか。弟子筋による「共感」的な解読や批判者の攻撃的な読みや用語をあげつらった素人の揶揄のどれとも違う、淡白な西田論でよみやすい。