この本はNHKのラジオ講座の教科書が元になっており、啓蒙書だろうと思ったが、どっこい、じっくり腰をおろして読むことになった。西田幾多郎は石川県金沢市生まれの哲学者であり、同時代・同郷の鈴木大拙とともに石川県が誇る思想家である。実は僕も石川県生まれで、小さいときから学校で西田幾多郎の偉さを聞かされ、高校生の倫理社会の時間には、先生から講義があったほどである。しかし、精神年齢が極めて低い僕には、ちんぷんかんぷんだった記憶がある。小坂氏のこの本は、西田の全著書・書簡集はもちろん、鈴木大拙を始め、西田と親交あつかった多くの人物の書簡も紹介され、西田幾多郎の思想史(研究史)といって過言ではないと思う。小坂氏は、西田幾多郎の『純粋経験』という哲学概念を、『道を歩いていて、思いがけなく野辺に咲く花を見、「アッ」と驚きの言葉を発したその瞬間状態』と紹介しているように、実に分かりやすい。かといって、西田の哲学概念の引用は、正確であり、直接、西田の著書に触れることにもなるといって過言ではない。ところで、今、何故、西田哲学なのか?小坂氏は、最後の方で地球環境について述べているが、これは西田の『行為的直観』=『物となって見、物となって行う』に関連しているようである。言い換えれば、地球環境保全には、自己(いろんな自己があるだろうが)を、それらを否定して、『地球となって見、地球となって行う(行うという意味は広いようだ)』ことが必要だと僕は理解している。何れにせよ、この本を読めば、西田は抽象的論議をもてあそぶような哲学者ではないことがわかる。それどころか、生きることの意味・人生について深く追求した哲学者であることがわかる。