数十年前の新書のような書名ではあるが、内容は堅苦しくなく、クラシックが好きな人にとって十分に楽しめるものになっている。文章も柔らかくて読みやすい。ブームのさなか、クラシックに関する新書が多数上梓されたが、どういう作曲家についてのどの演奏が良いのか、に終始しており僕などは面食らってしまっていた。「そもそもクラシックとは音楽全般の中でどういう位置を占めるのか?」「バッハとショパン、どちらも好きだけど何かが根本的に違う気がする…。」「夜想曲やマタイ受難曲を凌駕するような新曲が誕生しそうもないのはなぜか?」こういう疑問をすっ飛ばした本の山に苦しんでいたので、明快にそれに答えていく過程が非常に面白かった。特に終章『20世紀に何が起きたのか』は、クラシックが現在置かれている状況を捉える上で大変参考になる。ロマン派音楽(ショパンやワグナー等)の「偉大と呪縛」―一方でポップミュージックという嫡子を産み、他方で前衛音楽という反逆子を産んだ―を言明した本書は、長く読み続けられるだろう。