原題は"The Story of Philosophy"。1926年に出版されるやたちまちベストセラーとなり、世界各国に翻訳された名著。通常の哲学史とは異なり、重要なビッグネームを数名取り上げてその生涯や思想、歴史上の意義について解説・批評すると云うスタイルを取っており、話題の取り上げ方も必ずしも客観性を第一義としている訳ではなく、また今日では主流でない解釈や明らかに誤りに分類される記述も散見する為、教科書として使うのは無理だろう。だがその分、その人物と思想の全体像を大きな流れの内に生き生きと描き出してみせる手腕は美事であり、哲学すること、哲学して生きることの楽しさや充実感を学び、実感するのにはうってつけである。文章を追っているだけで何故だか本当に人格が陶冶されてゆく様な感触を覚える本と云うものが世の中には存在するものだが、本書は正にその様な意味での良き教養書である。訳文は必ずしも原文に忠実である訳ではないが、元来仲々の名文であると云う雰囲気は充分伝わって来る筈である。
尚、上巻で取り上げられている人物は以下の通り。
プラトン
アリストテレスとギリシアの科学
フランシス・ベーコン
スピノザ
ヴォルテールとフランス啓蒙