本著を記した岩崎氏は、東京大学名誉教授にして、カント研究や哲学入門書など多数執筆された人であった。本書は、哲学史などの書物でしばしば引用されているほどの、とてもよい書物である。
学問の歴史を扱う以上、気になる点はいくつかある。(1)著者の目的、(2)扱われた時代、(3)学派に対する軽重の置きかた、などたくさんある。まず、これらについて述べると、(1)については『…もともと初めて哲学を学ばれる人々のために西洋哲学史の概観を簡明に叙述することを目的…』(序p3(ローマ数字))とあり、小生はそれが達成されていると感ずる。(2)は、BC7世紀「ミレトス学派」から「実存哲学」に触れるまでである。(3)は、他のレヴュアーの指摘どうり、氏の主要テーマであったカントに重きを置かれてはいるものの、バランスを欠くほどではない、と感じた。そしてこれらをまとめる、氏の哲学史へのスタンスは、『…哲学史上に残ってくる哲学はそれ以前の哲学の限界を何らかの意味で越えてゆくという意味を持っているのであり、この意味で哲学史のうちには一貫した思想の展開が存すると考えるのである。』(『序論』p8より)という点に現れている。
本書の美点は、手軽なサイズと値段、平易に書かれ、また人物の略歴がまとめられ、もちろん参考文献も付されているというだけではなく、哲学史の「概観」のみならず、「辞書的ハンドブック」として用いるにも使いやすい。この点も、見逃したくはない。
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