中務哲郎氏の推薦文を引きます。著者は「学会にも属さぬ孤往の学究であるが…海外の研究事情に通じ、わが国西洋古典学百年の成果を摂取するにも敏である」、読者は「記述が時として残虐卑陋の方面に偏するのを怪しむかもしれぬが…真に独創的な書物の出現を喜びたい」。そう、単独執筆である以上、個性の横溢はむしろ美点でありましょう。
見出し語に添えられた豊富な諸欧語、丁寧なクロスレファランスと出典表示、充実した系図・年表・地図など、事典として高水準の作り込みがなされているのもすばらしい。編集部の努力も讃えたいですね。この企画を自ら放棄した東京書籍は面目を失い、みごと刊行に漕ぎつけた京大出版会は名を上げました。定価はたとえ倍でも廉いと思います。
古典語の片仮名表記には厳密な方針が採られていて、従来の慣用からは違和を覚えるむきもあるかもしれません。よって本書の「活用」にあたっては、各自の判断があってよいけれど、少なくとも本書を参看せずに初歩的な過ちを犯す愚は今後は許されないでしょう。白川静先生の字書に優るとも劣らない快挙に拍手を送り、20年に及ぶ著者のご苦労をねぎらいたいと思います。おめでとうございます!