著者は血管外科が専門で、5年間のイギリス留学で移植免疫関係の博士号をも取得しているエリート医師。また、「セカンドオピニオン外来」を日本で初めて開設した功労者でもあります。
そのセカンドオピニオン外来で、病気の治療は成功しても体の辛さが取り切れない患者さんがたくさんいることがわかり、西洋医学の限界を思い知らされるに至り、解決する方法を探る過程で漢方医学に出会ったそうです。全て解決できなくても「体が楽になる」という不思議な効き方に驚き、のめり込んでいきました。
日本の西洋医学教育を受けた医師が漢方を勉強する過程でぶつかる壁を超えるヒントも書かれており大変参考になりました。
また、漢方医学の啓蒙・普及のために動物実験をして一流英文雑誌へ論文を投稿しています。
心臓移植モデルマウスを用いて柴朴湯という漢方薬が拒絶反応を抑制することを発見、そしてその漢方薬を構成する生薬のひとつを除いたり、ひとつの生薬の量を増やしたり、色々なパターンを作成して実験し、結局「この種類・数の生薬をこの量で組み合わせて初めて効果が得られる」という漢方薬の完成度の高さを証明したのです(「Transplantation」)。
西洋医学の薬物は薬効成分を分離精製して単独の化学物質にしたものですが、漢方医学は「組み合わせの妙」という逆の発想です。
著者は「精製水とミネラルウォーターの違い」と例示しています。
あなたは、どちらが好きですか?
著者が漢方を勉強してほんとうに良かったと思うことは、診察室で患者さんに「何か困ることはありますか?」と聞けるようになったことだと記しています。
それまでは専門分野以外の訴えは却下するのが当たり前であり、患者さんも遠慮して細かいことは聞いてこないので、上記の質問は成り立ちませんでした。
でも漢方医学を知るといろんな体調不良に対応可能となり、逆に聞きたくなるのですから不思議です。
漢方入門書として、益田総子先生の「劇的」シリーズと共にお勧めです。