十二世紀半ばアイルランド(人)の幻視譚。前半は仮死状態に陥った貴族が、後半は罪を犯した騎士が生きながら、煉獄を訪れ帰還して語るというもの。悪事を避けるために「地獄の拷問の恐怖」を、善行を鼓舞するため「楽園の享楽」を約束する、という当時の思想から、彼等が何を恐れていたのか、何を善行だと思い込まされていたのか、何によって救われると考えていたのか、を読み取れるのかもしれない。拷問はひたすら残虐、教会への寄進が最高に近い善行、子孫の供養で救われる、など日本の地獄巡りとよく似ていると思う。本書が書かれたのはちょうど十字軍のころ、なぜあんな蛮行に及んだのかその背景にはこういう雰囲気があったのかもしれない。聖書だけでは分からない「キリスト教」の姿。こんなマイナーな書物を中世ラテン語より丁寧な日本語に翻訳した労に感謝です。