結論から書いてしまうと、シベリア鉄道の話を読みたくて、あるいは、本を読みながら旅した気分を味わいたくて本書を購入すると十中八九「なんだこりゃ…」「これはブログに書くレベルでは…」となってしまいます。
『西の果てまで』とありますが、シベリア鉄道で行くことができるのはモスクワあたりまでなので、シベリア鉄道についての表記は本書の半分程度あればいいか、と思い購入したものの、シベリア鉄道の情報は、その予想を上回る少なさ、というよりは、ページ数だけでなく全体において薄っぺらい内容の本でした。
本文を読み始める前に、中綴じの写真のページに目がいきました。「最後まで一言も口をきかなかった金髪の女性車掌」というキャプションのついた車掌の後姿があったため、「どうしてだろう?」と読み進めていくと、些細なことから著者自身がキレ、その女性車掌に日本語で罵声を浴びせ、そして満足しています。ほかの列車の車掌にも些細なことから「この女車掌とは絶対に口を利かないことを決心した」という著者の人間性を自ら露呈させているような恥ずかしい表現が平然と出てきます。
一人旅でなく同行者がいます。結局、シベリア鉄道の中では日本人二人で個室にこもり、カップ麺を食べ、焼酎を飲み、コンピューターゲームの将棋に興じ、ロシア人や他の乗客と積極的に接触しようとする努力すらしていません。全般的に先入観や否定的な視点による判断が多く、旅を通して新たな発見を読者に報告するような読み物にもなっていません。
旅物語を楽しみたかった私としては、ロシアに行って、ホテルのイタリアンが美味しかったからと二泊で五回も足を運んだことを美食家気取りで自慢気に書くこと自体が信じられないことですが、そもそも著者は、シベリア鉄道のロシア号をJRの特急「北斗星」のグリーン個室のような豪華列車だと思っていたようですし、家族で南太平洋を巡る五十日のクルージングに出たという記述があるように、もともと出発の時点で旅の種類を勘違いをしていたような気がします。また、旅を通して、その勘違いから何かを学び感じるということもなかった作品です。
旅の話として、まともに読めたのはベルリンのホテルの話とシャルルドゴール空港に向かう時の話くらい。取材費用を出版社に出してもらったノルマ消化として執筆されたのでしょうか? プロとしての筆力、版元の企画構成力自体を疑う大変お粗末な作品でした。
個人的には、シベリア鉄道での人とのふれあいを味わうなら
いつかモイカ河の橋の上で―会社を休んで59日間地球一周、鉄道での乗り継ぎ大陸横断のハードさを味わうなら
世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア横断2万キロ (新潮文庫)を、おすすめします。