話の主役は、本編のヒロイン・フィリエルの従姉妹であるアデイル姫です。パワフルなフィリエルに比べればやや影の薄かったアデイルですが、この話を読んで、彼女にもそれなりに内に抱えるものがあるとよくわかりました。
大まかな粗筋としては、東のオアシス国家に探りを入れるアデイル一行の話です。アデイルは街中でティガという少年に出会うのですが、このティガ、知り合ったばかりのアデイルにとても親切で、異教徒の礼拝堂に詣でたいというアデイルの願いをすんなりと受け入れてくれます。そこで見た異教の信仰の在り方に、自分自身が大きな宗教の柱になる生まれでありながら、腹を立てることもなく、素直に敬うアデイルは流石というところでした。
この話の真打であるティガはとても魅力的な男の子で、裏のない優しさ、内に秘めたもの、大人と対等に渡り合うしたたかさなど、なかなか欠点が思いつきません。
物語が急な展開を見せる後半、陰謀がうようよと湧いて、アデイル一行とティガ属する傭兵団は手を結ぶことになります。星空の下での二人の会話は、心に残るものがあり、とても綺麗な場面でした。
ノベルズ版では外伝だったこともあり、フィリエルとルーンの物語とは直接関係のない話ですが、これが加わることによって「西の善き魔女の世界」により深みが増していると思います。