人間は社会的動物である。とするなら、その社会性をどのように説明できるだろうか。この問いに、社会心理学は仮説形成と実験という実証的なアプローチによって社会・集団・個人のレベルでの「人の社会行動を究明する」ことで答えてきた。そして、本書は社会心理学史上のさまざまな応答の蓄積を「適応論的アプローチ」と「ミクローマクロ関係」の2点から整理する。
社会のレベルでは、《1章》社会的促進、社会的影響、影響発現のメカニズム、影響の発信源といったテーマを究明するが、たとえばシマウマ群の逃走行動を乗数プロセスで探ることなどに、マクロ視点からの切り口があったりする。集団のレベルでは、《2章》社会的交換とその原理的問題、応報戦略、共有地の悲劇。また《3章》協調行為、グループによる問題解決、グループの意志決定、話し合い行為というテーマを究明するが、たとえば社会的交換での囚人のジレンマはゲーム理論の応報戦略に、また話し合いという協調行為はステイサーの情報サンプリング論に数理演繹的な仮説形成がみえる。以下、《4章》で文化的な社会現象を、また個人のレベルでは《5章》個人の心理である感情や他者の社会的認知を、《6章》個人による集団の認知を、それぞれ説明するが、各章で適応論的アプローチが示される。
全体として説明の明解さが本書を美しいものにしている。しかし、適応論的視点とはけっきょく機能主義であり、たとえば自殺などの逸脱現象をどのように説明するのか(逆機能?)。また、group fallacyは「集団錯誤」の定訳より「集団論的誤謬」としたほうがより明解であるように思える。