初めての投稿なので、少しびびっています。間違いがあったらお許しください。
まず、今更、何で第一次世界大戦なんだろうか、と思いました。しかし、大正時代の同時代の尖端の知識人にとっても、殆ど意識されていなかった指摘の導入部分から、本書はスリリングな展開になっていきます。その一人、三木清の同時代観が、後半に戦後にドイツ留学後に総力戦の意味を解き明かす伏線として据えられていて鮮やかに印象づけられます。
そして、最後になって、複合戦争と総力戦の断層ーという本書のタイトルの意味が説き明かされていますが、この部分だけでも十分に1冊の本になるくらいに充実しています。
しかし、そもそも世界大戦や総力戦という言葉が、日本人によって作られた言葉だった、ということはこの本で初めて知りました。どなたか、そういう史実を指摘された方はあるのでしょうか。
しかも、それが第一次日米戦争の予感と表裏の関係であったことなど思いもしませんでした。そこでは架空日米戦記などの当時の国民心理を反映したものであることが発掘されていて、小説のタイトルの図版なども興味深いものでした。いえ、その図だけでなく、この本のカバーから始まって今まで見たこともないような図版や写真だけをしげしげと見ているだけでも、なんだかその時代にタイムスリップしたような気分になります。
また、学校では「大正時代の天佑」だとしか習わなかった、日本が参戦した意図なども、決定に係わったそれぞれの個性溢れる政治家・外交官たちのせめぎ合いがあったことが良くわかりました。また、この戦争が日独戦争だけでなく、参戦をめぐるイギリスとの外交戦、さらに参戦後にも日本と中国そしてアメリカの三つ巴の激しい外交戦が繰り広げられていたことも、豊富な史料によって極めて明快に書かれています。
歴史研究の醍醐味、ここに至れり!というのが実感です。
さらにさらに、日本のシベリア出兵についてはロシア革命を弾圧するためだと歴史の授業では教わっていたはずですが、その歴史的意味も、この本では四つの出兵として解読されています。そして、それぞれの出兵の意図がドイツやアメリカとの対抗や朝鮮統治、満州・ザバイカルへの進出、石油の確保などと密接に絡み合っていたこと等々、本書で初めて知った事実で、まさに圧巻でした。
そして、北樺太出兵を考慮すれば、日本の第一次世界大戦の期間は、何とほぼ11年にも及んでいたことなど、全く虚を突かれた思いでした。
私自身、多少は歴史書に親しんできていたつもりだったのですが、第一次世界大戦という世界的出来事について、実は何一つ知ってはいなかった、ということを本書で教えて貰ったように思います。
こうした歴史認識における空白を埋めていくことは、学校ではとても教えてくれませんから、一人ひとりがやらなければならないことなのでしょうが、どうしても自分だけは知っている、と思い込みがちなだけに、反省を込めて、こうした事実に向かい合っていきたいものだと思った次第です。
読み終わるのが惜しいような本です。