『GO』を著した金城一紀の本の中で言及されていた開高健『流亡記』。そして開高健『風に訊け』(集英社文庫)にあるのだが、「ずばり先生の厖大[ぼうだい]なる著作の中で一冊、何を推薦しますか」と問われて、「朝読むなら、『流亡記』。夜読むなら『夏の闇』。」と開高健自身が答えている。ということで、読まないとなーとずっと思っていた。
この小説の舞台は秦の始皇帝の時代。万里の長城を建設するためにかり出された男が主人公の短編。匈奴に対して長城を築く秦は、まるでテロリストに脅えてペルシャ湾岸まで出かけて軍備配置してしまうアメリカの姿である。長城を建設しても守りきれるはずはなく、縦横無尽に走り回る匈奴。かり出された人々にとって万里の長城建設は、なんのためか、どこをめざしているかわからない徒労にすぎない。そこから免れるため、主人公は匈奴のいる砂漠に入っていく。
そして「私たちの時代はもう久しく新鮮な上昇力に接していないのだ」ということばが心に響く。一匹狼のように生きていきたい。男の子の夢がここにある。男の子って、たいへんだな。