かつて著作でサイババとの邂逅(かいこう)を「身体中が震えるほどの至福」と記し、「神の化身」と敬愛していた1人である著者は、本書において、サイババによる児童・青年への性的虐待や臓器売買疑惑、そして物質化現象のトリック疑惑といったさまざまな暗部を、虐待を受けた本人や家族、サイババ学校の元校長や元音楽教師、現役の専属ビデオカメラマンなどへのインタビューをもとに告発する。彼らの言葉を冷静に受け止めようとする著者は、扇情的に教祖のスキャンダルを暴くわけではなく、自らも戸惑いながら、信仰の崩壊に直面した人々が前向きに生きようともがく姿を浮かび上がらせる。
本書は、イギリス、スウェーデン、ドイツ、デンマーク、アメリカと世界中を飛び回り、多くの元信者たちと寄り添いながら、やがてカルト的なものから脱却し、「ぼくたちの外側に『神』をみる時代は、終わった」という結論にたどり着くまでの著者自身の心の軌跡をつづったルポルタージュとしても成立している点が秀逸である。(吉里かなう)
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