25年ぶりに見直した。
本作のテーマは「男の不能」である。主人公は行動派のカメラマンだったらしいが、現在は片足の骨折で歩くことも出来ない。暇つぶしに部屋の窓から周りの部屋を見ているうちに殺人事件を見つけるという話だ。
謎解きにおいてベッドの上の主人公は冴えているが、いかんせん全く動けない。主人公の代わりに恋人と家政婦が動き回る。
一方、主人公の友人である刑事は主人公からの問題提起に対して動きが遅い。主人公・刑事=男性が動けず、恋人・家政婦=女性が活躍するという図式に綺麗に分かれていると言って良い。映画の最後の部分で主人公は犯人に窓から突き落とされ、もう片方の足も骨折してしまうのも無理はない展開なのだ。
「主人公とその恋人」と「犯人とその妻」の関係は実は類似している。主人公が骨折で動けないことと、犯人の妻が寝たきりであることは、重なっている。
犯人の妻は殺害されてしまうわけだが、主人公も実はその恋人に今後「殺されて」しまうのではないかと考える事は結構楽しい。
主人公は恋人に対しては、「自分はアウトドア派のカメラマンであり、そんな自分と結婚して世界を駆けまわること等は出来ないだろう」と言っている。元々お嬢さん育ちの恋人は、自分にはかような生活は可能であると断言しているが、確かに話が進むにつれて、彼女の行動力が光る場面が多い。それに対して、言っている割には何も出来ない状態に陥っている主人公はだらしが無い展開になっている。
それを見る限り、近い将来に恋人と結婚させられ、有る意味「不能」なまま、都会でだらしなく暮らすようになる主人公の姿も見えてくるような気がして来る。その状態を「殺害された主人公」と言い表しても良い気もして来る。
それにしてもヒッチコックの映画は面白い。面白みの中にちらりと深いテーマが見え隠れしているところが彼の天才である。芸術と商業を両立させることが出来る映画監督はヒッチコック以外には余り思い浮かばない。