スウェーデンで心理サスペンスを書いて右に出るものはいないと言われるカーリン・アルヴテーゲンが’03年に発表したデビュー第3作目の長編である。
タイトルの「裏切り」がいろんなシチュエーションであらわれる。初めは一緒に暮らして15年、結婚して11年という夫婦の夫の側の浮気だった。妻は夫と浮気相手の女に復讐を誓い、実行する。またここに “事故”で植物状態となった恋人を献身的に看病する若者がいた。しかし、実は彼は彼女に「裏切られ」ていた。やがて妻とその若者が交錯し、物語は急展開する。そしてあれさえなかったらということがいくつも重なって一気に悲劇のラストに至る。
アルヴテーゲンは、これら「裏切った」もの、「裏切られた」ものの両側からの視点で巧みに、驚くほどヴィヴィットに心理描写をしてみせている。本書の裏表紙に「男女の心の奥底を緻密に描いて新境地を開くサイコサスペンス」とあるように一読したイメージはドイツのセバスチャン・フィツェックの一連のサイコもののような感じがしないでもないが、本書で生々しく描かれる心理描写や会話のひとつひとつはサイコを飛び越えて「一歩間違えたら自分も」と思わせるくらいリアルで怖い。
本書は、男女の愛憎を「裏切り」という行為で切り取った第一級の心理スリラーである。