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裏ヴァージョン (文春文庫)
 
 

裏ヴァージョン (文春文庫) [文庫]

松浦 理英子
5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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商品の説明

内容(「BOOK」データベースより)

次々に書かれる短篇小説と、それに対する歯に衣着せぬ感想コメント。やがて感想は厳しい質問状となり、しだいに青春をともにした二人の中年女性の愛憎交錯する苛烈な闘いが見えてくる―。家族でも恋人でもなく、友達に寄せる濃密な気持ちの切なさ、そしておかしさを、奇抜な手法で描いた現代文学の傑作。

内容(「MARC」データベースより)

物語が語られる。それに誰かのコメントが。これはいったい誰と誰のやりとりなのか? 読み進むうちに物語は奇妙な形で現実を映し始め…。〈ソフトカバー〉 --このテキストは、絶版本またはこのタイトルには設定されていない版型に関連付けられています。

登録情報

  • 文庫: 247ページ
  • 出版社: 文藝春秋 (2007/11)
  • ISBN-10: 4167742012
  • ISBN-13: 978-4167742010
  • 発売日: 2007/11
  • 商品の寸法: 15.2 x 10.6 x 1.4 cm
  • おすすめ度: 5つ星のうち 4.4  レビューをすべて見る (7件のカスタマーレビュー)
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哀しみ 2004/5/11
By reo
形式:単行本
これは短編小説ではないのかも、と読み終わった時に思った。高校時代の親友であったらしい、今は中年の二人の女性。かたや公務員は、月一本の短編小説を家賃に、かたや小説家のなりそこないと同居を始める。と言っても、二人はほとんど顔を合わせずフロッピーだけのやりとり(妄想じみた月一本の短編とそれに対する批評)が続く。批評はいつの間にか、質問状となり、詰問状となって、創作世界は現実世界を侵食していく。
短編一つ一つが刺激的で面白いので、読みはじめは一風変わった短編小説かな、と思うのであるが、そう言い切れない妙な構成の小説。

最後の短編が哀しい。どちらの人物が書いているのかが曖昧であり、もしかしたら読者に対する罠かもしれないけれど、でもある種のタネあかしであるようにも思える。しかしどちらが書いていたとしても、それは暗号のようなラブレターだ。人と人とは性を介在せずにどこまで分かりあえるのだろう? 性的に他人とかかわりあうことをやめたその先、どのような(友人)関係を作ることが可能なのだろうか? ラブレター(のようなもの)を書いている人物は性の介在しない人間関係を信じているようだが。

タイトルが「裏ヴァージョン」であることを思うと、松浦理英子が今までの小説で一貫して語ってきた性の哀しみのようなものの解説的な作品になっているような気もする。それは「性のマイノリティ」だけではなく、他人にどう非難されようが、慰められようが、どうして正常に戻ることのできない自分と世界とのズレ、自分と自分とのズレ、そこから生じる挫折感、喪失感についてなのではないだろうか。それ語る視線が冷静なものであるからこそ、哀しみはさらに引き立つ。

小説の中で弱者の夢想するユートピアは必ず「いつか」のことである。現実では決して訪れることのない「いつか」。現実では居場所を限られる、或は居場所などはなから提供されないマイノリティの見る夢を、まるで私自身の哀しみであるかのように、この小説の中で見たように思う。

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By カスタマー
形式:単行本
物語は突然、アメリカを舞台とした短編小説で始まります。次々に提出される20枚の短編小説とそれに返される批評。それは次第に「挑戦」と「応酬」の形をとりはじめ、エスカレートして行きます。その先には何があるのか。SMや同性愛のイメージの非日常性が、だんだんと薄れてきた時、そこに見えてくるのは誰もが感じたことのある限りなく切ない一つの「青春小説」。最後まで目をそらさないことをお勧めします。
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11 人中、8人の方が、「このレビューが参考になった」と投票しています。
By 浮葉
形式:単行本
今まで読んだ作者のどの作品よりも、うまい、と思った。
一つ一つの短編の語り口、エピソード、全体の構成、すべてにおいてゆるぎなく、最後には思わず主人公(作者?)に感情移入し、ひとごととは思えないように仕向けられている。

今までの、純粋率直な文体でちょっと夢見がちな物語を語っていた手法を「子供」とすれば、まさに「大人」の仕上がりだと言ってもいい。幻想から醒めた人間、現実に直面し夢を見られなくなった大人は、いったい何を目指せばいいのか?その葛藤と発奮がひねくれた構成からひりひりと伝わってくる。ひりひりとして、それでも、たまらなく魅力的に思われる。

SとMという関係、作者と読者という関係、女と女という関係
あらゆる関係の理想と現実。過去と今。
すべてを超越し、さらに次の関係を目指して、作者は新たなスタートを切ったのだ。
この作品がおそらく松浦理英子文学のターニングポイントになるだろうと思う。

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