人生には無数の分かれ道があって、可能性自体はいくらでもあるのだが、選択の結果その多くを断念し捨てなければならない。誰にとっても、人生とはそういうものだ。
目次をみると、「わたしは大工」、「わたしは極地探検家」、「わたしは芸術家」、「わたしは映画製作者」、「わたしはスポーツマン」、「わたしはプレイボーイ」となっている。
だが、いずれも「わたしは・・・になれなかった」という意味を含みとしてもっている。つまり、ここにあげられたものになる願望と可能性がありながらも、結局は断念して、そうならなかったということだ。
『裏がえしの自伝』というタイトルが、いかにも梅棹忠夫らしい。「オモテもウラもあわせてこそ人生」という姿勢で一貫している。だからこそ読んで面白いし、実に痛快な内容の一冊となっているわけだ。
しかも、この本が書かれたのは、フィールドワークを中心とする学者であった著者にとって、きわめつきの挫折となった失明後のことである。多くの挫折を乗り越え、果たせなかった多くの夢について語る著者の姿勢からは、後悔というよりも、達観という骨太の姿勢がうかがわれる。
読むと実に面白い本なのだが、長く絶版になっていたのが残念だった。このたび文庫版として復刊されたことは実に喜ばしい。「人生論」として読むこともできる本である。読めば、ほんとうの元気がでる。
梅棹忠夫ファンはもちろん、そうでない人も、ぜひ多くの人に薦めたい。