原作有りの裁判傍聴漫画を描いていた筆者が、
まさかの実弟の逮捕からその裁判の傍聴に赴き、過程やその周囲を描いた作品。
俄に現実とは信じがたいが、
作中にて明記されている逮捕生年月日で検索すると直ぐ該当するものが出てきました。
意外にも被告人家庭の崩壊などはさらっと描かれており、
被告人自身の周囲の動きは殆ど描かれておらず、
裁判の花とも言える検察、裁判官、弁護人・被告人のやりとりにもそれほどウエイトは置かれていません、
どちらかと言うと筆者の心情を書き連ねたドキュメンタリー的な要素が強く、
筆者の今までの作品を読んだ身としては物足りなさを禁じ得ませんでした。
被告であるにも関わらず終始他人事のような弟、
その息子を溺愛し、本当は優しいいい子…と、ありがちすぎるベタな母親、
更正のため厳罰を望むと言いながらも、
取りあえず長いことブチ込んで欲しいと望んでいるように見える兄二人、
裁判の過程で新たに発覚する被告の一面に戸惑う周囲…
裁判の流れ云々よりも、
被告人の家族はこんなにも悩み苦しむんだ!と言う筆者の声は聞こえます、
とは言え、タイトルから期待するような裁判模様が殆ど無いのは残念でした。
それでも人間模様はしっかり描かれており、
被告と作者の背景が見えてきます。
彼らの母親は女手1つで3人の息子を育てた大変な苦労人であり、
作者が子供の頃の授業参観の思い出と現在を重ね合わせる部分では、
母を想う子の立場である人であれば誰しもが胸に来るシーンであり、
私も読んでいて落涙してしまいました。
また、演出?と思ってしまうような面が多々あり、
リアリティに少々水を挿す結果になってしまっています、
初公判には非常に厳しい裁判官、
被告となった息子を優しいと言うが、
それは普通だと母親を厳しく叱るがその後人事異動にて退場。
新たな裁判官は温厚そうな人。
しかし誘導尋問のような狡猾なトラップを仕掛けている、
偶然というか幸いにすり抜けるが、
最後には人情派の一面も…
この辺は普通に事実を並べたのかも知れないのですが、
若干の作為を感じてしまいます。
それにしてはまとまりに欠けているので、
作者の技量不足か?事実を書き連ねただけなのか?判断に悩んでしまいます。
そんな感じで、演出(と感じる部分)と作中との実態にズレを感じる局面が多いのです、
この辺はやはり作者の力量不足なのかなと感じました。
読了後に少々の歯がゆさは残る物の読み応えは十分にあり、
事実ならではの生々しさもありました。
なお蛇足ながら、星川検事のルーツが見えたりと筆者のファンへのサービス的な要素もありました。