本書は裁判官幹部ポストの歴代就任者の人事システムを総ざらいすることで,我が国の官僚制的司法の特徴をあぶり出した好著である.司法の現場は,学識も何もない私のような庶民には縁遠く感じられる場所で,裁判官についてもなんとなく「エリートの集団で,まぁ,その中でも東大・京大出が有利なんだろう」という程度の認識でしかなかった.その「なんとなく」を実証的に示したのが本書である.
驚くべきは本書の3分の1を占める「基礎資料」だ.100ページ以上にわたって,歴代の裁判官幹部ポストに誰が就き,出身大学はどこで,何年生まれで,「要職4ポスト」はどれで,どこの高裁長官を務め……といったことを示した「べらぼうな」数の表が延々と並んでいる.本文ではこれらのデータを基に,裁判官がどういった経路でキャリアを積み上げているか,それがいかに歪んでいるかが指摘されている.読者は,「司法権の独立」を形式的に守るために「裁判官の独立」が犠牲にされている,ひいては「司法権の独立」の制約さえ懸念される官僚制的司法の現状に驚かれることと思う.
本書に,「人事が裁判官の最大の関心事」という見出し(13ページ)がある.
この文言に少なからぬショックを受けたり,思うところのある方は,一度手にとって,序章と終章,基礎資料だけでも眺めてみてはいかがだろうか.
また,個人的には,第2章第2節「重複就任関係にみる高裁間序列」がおもしろかった.同じ「高等裁判所長官」ポストでも,こんなにも特徴的な開きが存在するのかと,素人目に新鮮な驚きを感じた.著者の丹念な調査結果の賜物だろう(もっとも,裁判員裁判の時代なのだから,司法に関して「素人」なんて言っていてはいけないのかもしれないが).
日本の官僚制的司法の現状を知ろう・分析しようと考える人にとって,本書は巨大な業績・参考とすべき大著なのではないだろうか.著者のひたむきな研究姿勢の大きな果実に,頭の下がる思いである.