本書とほぼ同時期に北尾トロ氏「裁判長 ! ここは懲役4年でどうすか」が刊行され、同じようにベストセラーになった。北尾氏の作品が、著者が裁判にのめり込み過ぎて、一人劇場のような形になり、却って読者をシラケさせているのに対し、本書は第三者的立場で淡々と「裁判官のお言葉」を綴る形式を取っているのは巧みだと思った。
こうした状況で読み手にある種のオカシサを感じさせるには、むしろ"しかめっ面"の文体で書いた方が良いのである。本書はこの点巧みに出来ていて、裁判官の人間味が伝わって来る。被告の状況等について語らないのも、焦点を「裁判官のお言葉」に絞ったからであろう。それにしても、さだまさし「償い」には驚いた。
裁判官という法律が服を着ているような人物にして、これだけの人間味がある事を示した着想に優れた書。