いわゆる「裁判員制度」の問題点について、徹底した陪審制度導入推進論者として
概説した入門書である。
裁判員制度について全く無知であった私にとって大変参考になった。
なぜなら、本書を読んで
1.シュミレーション仕立ての話で、本制度に具体的な実感を持てた。
2.裁判員制度と他の市民参加制度および現行制度との違いが有る程度つかめた。
3.本制度の成立過程やその内容の概要と問題点がある程度つかめた。
4.本制度実施に伴う疑問や不安も一定程度解消された。
からだ。
しかし、著者の以下のような見解には必ずしも同意できない。
1.裁判官は等しく高額所得者の子弟で、均一な思考形式を持った集団である云々。
2.裁判官と参加した市民との意見の不一致率が高いことを持って、陪審制が最も
優れた制度である根拠になり得る?
3.裁判員に選定された場合、例えば自家営業は店を3,4日くらいは休業すべし、
田舎の開業医はどうせ365日働いているわけではないので、3,4日は休診にする
か代診を頼めばよろしい、裁判員に選ばれるのは名誉なことだからと平気で言って
のける感覚。
もちろん、死刑判決後再審無罪や世論・世情に合わない判決が時に見られることも承
知している。しかし、これらは一人裁判所や裁判制度にその責任を帰することができ
る問題なのだろうか。原告人あるいは被告人側の立証技術の未熟さや法律そのもの
の不備による場合は皆無なのだろうかという疑問を感じた。一方、著者によれば、陪
審制度下では、被告人に圧倒的な不利な事例でも立証能力の高い弁護人により無
罪を勝ち取れる可能性が出てくるし、市民はこれを受け入れることを要求されるとの
こと。だとすれば、逆の場合も当然その結果を受け入れなければならないし、何も陪
審制に限った話ではなかろうと言う気がする。
いずれにしろ、情報リテラシーの観点からは、他の本を併せて読むことが必須であ
る。