わが国の刑事裁判の問題点を知りつくし、死刑存置への国家の工作が欺瞞的であることもこまごまと突くだけの能力をお持ちの二人の法律家が、講演と対談で読者に訴えかける。
私もほとんどの点について逐一「もっともだ」と思う。名張毒ぶどう酒事件の再審の道を拒み続ける裁判所の態度など、本当に憤ろしく思う。が、それでいて、本書の58ページに載っている、つぎのような学生の「質問」が出てきてしまうことの避けがたさをも感じる。
「近代に入って人間の命の大切さが認識されるようになり、死刑制度は見直されるようになったことはとてもよく理解できるのですが、尊重されなければいけないその命を奪っている人が犯罪者、そして死刑囚だと思うのです。もし死刑がなくなったら、その命を奪った犯罪者たちは、どのような刑をもって罰せられるべきかというのが私の疑問です。」
私も、教職にある者として、学生からよく聞かされる意見であり、「日本人の80%以上が死刑支持」と言われる場合の、その「80%」に属する世論調査の対象者も、意見はまあ、だいたいこんなところだろう。
マスコミの情報操作、その裏側にある法務省を始めとする国家当局自身の暗躍……があるにしても、なぜこの二人の法律家のような声が「80%」の耳に届かないのかを、真摯に考えるべき時が来ているように思う。
石川裕一郎さんの「おわりに」と題する解説が、一般人に難解すぎることも問題だ。実際に裁判員になる人は、石川さんのようなインテリの言葉を理解できる人とはかぎらない。むしろ理解できないほうが普通だろう。