2001年の少年法改正により、厳罰化・重罰化がなされ、刑事裁判から再移送の可能性は残るものの、重大犯罪については被害者のために公開審議をつくす目的で原則逆送と(更に現在では、家裁での審判を被害者・遺族が傍聴できるように)なったが、本来これは刑事処分が目的ではなかった。
それが世論に押され、約50年も減少続け事実上受刑者がいなくなっていた少年受刑者を増加させ、それで良しとしているが、本書のようなPDD少年において、「処置環境と療育が与えられれば自閉症の人たちも更生は望め、贖罪意識も育っていく可能性が期待できる(十一精神鑑定医)」との公判証言、「知的障がいを持つ少年は医療少年院へ行くが、出院時帰住調整・福祉へのつなぎを必ず行うため再犯率は低い」との山本譲司氏の話を知れば、損得の計算からなる大人の犯罪と本人が何をやっているのかわからない少年の犯罪で分けず、単に罪の重さで分類する事で良いのかと、強く疑問を持つ。
調査報告書・鑑別結果通知書でさえ、少年院での矯正教育が適当と報告されたにもかかわらず、判決は、移送要件・障がいによる特異な精神状態や資質についての矛盾を含み、殆ど実現不可能な処遇・法務教官の人事に対する意見をつけた極めて異例なもので、量刑についても判事の苦悩が窺えた。
いずれ彼らは出所する。
社会の犯罪不安や厳罰化で成人刑務所は過剰収容となり、処遇システムの崩壊から受刑者の改善更生を阻害し、社会復帰を困難にしている現状からみて、社会は早晩、安全のために更生教育コストに耐えるか、将来の再犯・累犯による不安要因の増大に耐えるかを問われる事になろうとの指摘は鋭い。
本書刊行約3ヵ月後の10月25日、「(少年)刑務所の処遇能力に根本的な不備があるとは考えがたく、その処遇が被告の改善に有害無益とは言えない。 有期刑を選択した時点で、被告に有利な事情を考慮したとみなすことができ、上限の懲役15年を科すべきだ。」と高裁判決が出、11月9日に判決は確定した。
一歩後退とも取れる判決であり、もうしばし待ちそれを加味した上での出版を、と惜しい気もしたが、減点はしなかった。