東日本大震災で不明者も含め、市の人口の実に8%がいなくなった陸前高田市。その市長が、震災発生から現在までを振り返った。5ヶ月間の回想だが、普通の人が一生かかっても体験しようのない、街も生活も家も家族も、一夜にしてすべて消し去ってしまった津波の衝撃、そして過酷な日々が被災地にあったことを本書は伝える。あちこちで建物が音を立てて崩れ、目の前で「助けて」と叫ぶ人が波にのまれ、助けに出た市職員も戻ってこない。著者は妻を失ったが、公人のひけめで捜索願も出せず、「選挙に落ちていれば」「最低の人間」と自らを責め続けながらも、不休で陣頭指揮を執り続ける。
見出しが簡単に立つ言葉には、圧倒的なメッセージ性がある。「被災者は24時間被災者」という言葉がそうだ。首相以下、国会議員が多数訪れ「大変ですね」と著者に声をかけたが、東京でその見聞をフィードバックしてくれないことに、著者は強く憤る。被災者は寝ても覚めても被災者。被災者でない人も、東京に帰ってもせめて気に掛けてほしい。それだけでも励みになるという。そして、国会議員には復興の足かせになっている規制を取っ払うよう霞ヶ関相手に汗をかいてほしい、と著者は願う。それにしても、市長と記念撮影だけして帰るとか、廃墟の市庁舎前でVサインで写真撮ったというバカは次の選挙で落選してほしい。
復興業務に忙殺される合間を縫い、「政府も議員も動かないなら自分で伝える」と、積極的にメディアで訴え、本書をまとめた著者はすばらしい。どんな形でも復興を応援したい気持ちで☆5に。余談だけど「情熱大陸」に似た読後感だった。震災前は陸前高田という街の存在すら知らなかったが、戸羽太という名前と共に、同市の名は今後多くの人の心に銘記されるだろう。