近年、月岡芳年に美術愛好家や熱心な美術ファンの関心が集まっており、刊行物も増えてきました。このハンディなサイズの画集もその一つです。
明治の歌麿と称され、最後の浮世絵師とも言われた月岡芳年は1839年生まれです。富に評価されている歌川国芳に弟子入りし、画号から1字をもらっていることから画風は伺えるでしょう。国芳の個性的な画風の影響は見てとれます。このブームは時代が国芳や芳年の良さを評価するぐらいに追いついてきたのだと思っています。
表紙の「奥州安達がはらひとつ屋の図」は18ページに掲載してありますが、明治18年(1885)の制作で、人形浄瑠璃から題材をとったと解説されています。
冒頭の『魁題百撰相』に代表されるように「血みどろ絵」で有名な芳年の特徴ある錦絵が並んでいました。本書掲載の作品は主として国立国会図書館所蔵のもので、東京国立博物館や素敵なコレクションを持つ町田市立国際版画美術館の作品も数点ずつ掲載してありますが、何れも保存状態は良く摺りも良好です。
芳年の「血みどろ絵」に注目が集まっていますが、明治の歌麿と称されたのは、第2章で全32作品が紹介してある傑作集『風俗三十二相』の出色ともいえる連作の評価でしょう。晩年の傑作美人画なのは間違いないです。様々な年齢や職業を持つ女性をキャッチ・コピーと共に表しており、まさしくイラスト・レーターの先駆とも言える手法が伝わってきます。これらは明治21年(1888)の刊行で、江戸の風俗を知る上でも明治時代の錦絵を知る上でも避けられない作品群でしょう。
芳年の特徴として怪談絵も掲載してあり妖怪が一杯登場します。現代の劇画や漫画の先駆として見ても成立するでしょう。
解説は美術キュレレーターの平松洋氏で、芳年の生涯を4ページにまとめて解説してありました。また全作品に簡明な説明が施されています。