惑星クマントに足止めされたローダン一行が迎える笑撃的な次なる展開と人類なき地球に飛来した黒い宇宙船の謎に挑むテラ・パトロールの活躍を描く大長編SFスペース・オペラ宇宙英雄ローダン・シリーズ第388巻。本巻の執筆者は、大型新人登場テリドとベテラン健在マールです。本書に初登場した新人作家テリドは相当に冗談好きな性格と見えて、今回はお馴染みの変人ポスビ研究者ガルトを主役にしてグッキーも苦痛に身をよじらせ涙を流して笑い転げる馬鹿騒ぎを描いています。表紙カバーのエキゾティックなソラナーの美女タータは実は筋書きの上ではそんなに重要な役割ではないですが、まあ男ばかりの世界に華やかな彩りを添えて良いでしょう。レギュラー陣で登場するのはガルト以外ではローダンとグッキーとアトランが少しだけと遠慮がちですが、愉快な新キャラクターのポスビのセールロクスとマット・ウィリーのクレエンツの面白さは最高ですので、これからもテリド氏は大いに期待出来そうです。
『衛星シュ=ドントの基地』ペーター・テリド著:《ソル》船内でじっと次の動きを待つローダンとは別に相も変わらずポスビとマット・ウィリーと追っかけっこをするガルトだったが、遂に捕まり医療センターで今正に手術されようとする瞬間にポスビとウィリーを道連れに消失してしまう。本編ではテルムの女帝の全権代行フェイヤーダル人が調査の対象に選ぶのがよりによって変人中の変人ガルトである可笑しさ、ガルトが回路の狂ったポスビから胡椒エキスを注射されたり、偶然冗談で済まない危険な機械に装着されてしまったりと、これでもかとばかりに強烈なユーモアが炸裂しますが、それにしてもガルトはどんなに酷い目に遭っても生き残るしぶとい男なのですね。『黒い宇宙船』クルト・マール著: テラ・パトロールの仲間の研究者ラングルがノルウェーで発生した奇妙な事象を発見し、カウク率いるテラナー3人とK=2ロボット・アウグストゥスがグライダーで調査に向かう。本編では生き残りの海を愛する老人スカンが漁業博物館に異常な執着を見せ、仲間を欺いて頼りないアウグストゥスを手下に従え狂った行動に出ます。もはや存在しない管理エレメントを引き合いに出して誘導すれば容易く騙せてしまうアウグストゥスは仲間達にとっては誠に厄介な存在なのですが、それでも「駄目な子ほど可愛い」的な愛情からか腹を立てながらも決してお払い箱にしないテラナーの優しさには心が休まります。老人については自業自得とはいえ決して悪人ではなく昔気質の頑固一徹な性格が災いとなってしまったのがとても残念で悲しいです。
本巻の翻訳者、渡辺広佐氏のあとがきは「記憶の糸とは不思議なものだ」で締め括る今年の夏から秋にかけての思い出を気ままに綴る好エッセイです。ガルトの体を張った活躍のお陰で異種族と友好を結べたローダンの興味が盛り上がる物語は残念ながら一時お預けで、次巻もマスクの男アラスカと少数のテラナー達がテラを訪れた黒い異人の謎に迫る先の予想が不可能な物語に期待し息を呑んで見守りましょう。