台湾はもう少し日本統治が続いていたら、日本に同化したかもしれない。本書に登場する、日本語での俳句作りを楽しみにする年配の人たちの存在がその証だ。
本書は日本と浅からぬ関係で結ばれた台湾の複雑な歴史と現代(といっても約20年前だが)の姿を捉えた、街道をゆくシリーズのベスト5に入る名著だ。
著者は台湾を一周しながら、無主の島が、オランダ、鄭成功、清の支配を経て日本領になり、戦後は本島人が外省人の支配(2・28事件のような弾圧もあった)を受けた後、当時の李登輝総統の下、私を捨てて公につくす政治が大陸より一足先に根づこうとする様子を生き生きと語る。
台湾の日本統治が成功した理由は、後藤新平等が熱心にインフラを整備したから。もちろん、国家神道の押しつけや霧社事件のような山人の反抗を受ける負の側面もあった。しかし、総じて日本統治は成功したと言えるだろう。
本書でも触れているが、戦後では、蒋家の台湾支配を自ら終わらせ、李登輝を後継者とした蒋経国の英断が光る。その李登輝と著者の対談が巻末に収録され、国家や台湾の特殊性について考える契機になる。これは必読だ。