古代は鉄等の物品と人が大陸から日本に渡って来た海上の懸け橋である壱岐・対馬両島を旅し、遺跡を訪れ、古代の歴史を語るのが中心の巻だが、私にとっては二人の江戸時代の日本人が印象的だ。
一人は雨森芳州。盧泰愚大統領来日時(1990年)の国会演説で善隣外交に尽くした人として芳州に触れるまで、名前すら聞いたことがなかった人が多いのではないだろうか。私もそうだった。
しかし、著者は78年に週刊朝日に掲載されたこの旅行記で、一話を雨森芳州に割いている。しかも単に経歴を知っているというレベルにとどまらず、芳州の随筆「たはれぐさ」を読んでいること、新井白石が兄弟子であるという関係まで知っていることに驚く。
もう一人は芭蕉の弟子・曾良。幕府の巡見使の一員としての旅の途中、壱岐で客死したのである。著者はその墓を訪れ、曾良の最晩年を思う。
本巻もまた、著者の博識の並々ならぬことに感心する。