「愛のさかあがり」でオジギビトのことを読んだのは大学の頃だった。工事現場でみかけるお辞儀をしている人のイラストにさまざまなバリエーションのあることが紹介されており、当時としてもなかなか面白かった。今、こういう風に集大成されたわけだが、その量といい質といい大変なものだ。さまざまなタイプのオジギビト、さらにその周辺の動物や植物イラスト、また外国の例まで豊富に蒐集している。路上観察学史上に残る研究だろう。しかし大部分が実例写真の羅列であるため、最後の方は幾ら何でも飽きてくる。そこをとりさんならではの話術で何とか持ちこたえている感じ。現物蒐集は勿論大事なのだが、この本でも多少触れられている系統樹など、思索の方も(仮説で十分面白いのだから)もう少し織り込んで欲しかった。ともあれ、「愛のさかあがり」からは随分いろいろな分野が立ち上がってきたように思うが、この書物はそのなかでも非常に立派にさかあがった愛だろう。