著者が日常生活の中で感じた、考えた内容を原稿用紙2枚前後の字数でまとめた短編集、「長英逃亡」や「漂流」などのような重厚感はなく、読む価値のない作品と侮られるかもしれないが、どんなテーマの話でも教訓的な示唆やユーモア、妙な余韻を残すオチがあり、読後の充実感を感じることができる。たとえば中学校や高校の国語の授業などで本作品を取り上げて、感想を話し合わせたり、オチの部分を削除して「最後はどんな文章で締めているか」といった問いをするなど、無駄を一切取り払った短い文章の特性を活用することも有りだと思う。著者の古い世代の考え方と現代の中高生の考え方のギャップも学習意欲を刺激すると思う。考えようによっては、吉村氏唯一のコメディ小説といえるかもしれない。特に同業者の奥さんが関係する話は著者のコンプレックスが見えて楽しい。