2002年にノーベル記念経済学賞を受賞したカーネマンとトヴェルスキーが開拓した
経済学の新分野「行動経済学」を俯瞰的に紹介した良書。経済学もしくは経済学を
ベースにした経営学を学んだ人には役に立つ本だと思う。
これまで、経済学では前提条件として合理的な人間を想定し、その下に理論構築・
実証研究が行われてきた。近似的に正しいと納得できる結論もあれば、どこか現実
感覚にそぐわない結論もあった。後者は理論上の帰結と現実とを粒さに眺め、傍証
を用いて説明するしか方法が無かった訳だが、それを実験を通じた心理学の手法で
体系的に実証したところにこの分野の意義がある。その実証分析から導き出された
結論をまとめたものの一つが本書である。これまで経済学を学び、知識を更に獲得
したいと思っている人には経済学の新分野を学ぶ上で有意義なものであると思う。
しかしながら、新古典派経済学に闇雲に批判的な人が読むことはお勧めしない。
この本は決して「人間が非合理だ」と主張する本ではなく、「合理性を追求できな
い理由」を分析した本である。本書でも引用されているように、「事実の集積は科
学ではない」(ポアンカレ『科学と仮説』)ので、感覚的に導いた(身勝手な)セオリ
ーを補強する材料とはならない。いくらかの経済学的バックグラウンドを求められ
るのが本書の辛いところと言える。