この本は今はやりの癒し系の類ではない。そういうことを求めて読むと裏切られる結果となるはずだ。しかし、この本は、「絶望」、「無力感」、「無関心」を乗り越え、新たな社会を作るためには何が必要かを提示している。
以前から日本を含めた全世界で進行していた「末世」の様が3.11で露呈した。日本は核の脅威が日常生活の一部になるという、「末世の極み」に達してしまった。今から思うとなるべくして今の状況に至ったとしか言いようがない。その責任の一端は我が身にあったと実感している人は多いかもしれないが、責任を感じてはいても、あまりにも大きな問題のため、個人の力では何をどうすればよいのかわからない。考えれば考えるほど不安と無力感でいっぱいになってしまう。
仏教に縁がない人たちにも是非この本をお勧めしたい。なぜなら、自分を取り巻く「苦」を乗り越えていくには、まずは自己をどう理解するか、が述べられているからだ。著者は、今までの「自己」へのこだわり(執着)に気づき、そこから新たな自己(つながりの中の自己)に目覚める(転じていく)ことが必要だと説明する。それを可能にするのが、仏教(浄土教)の考え方だ。今までのやり方がうまくいかなくなった時こそ、別の価値観(考え方)に目を向けてみる契機となるのではないか。