本書で上野氏が一貫して主張しているのが、
「うつ だからといって、何をしても、しょうがないね……と許されると
思ってはいけない。うつを抱えて生きるなら、まず一人の社会人であるべき」
ということである。
実は私も、軽症うつのまま10年以上、うつと同居して生きている。
だから上野氏の言うこともわからないではない。
とくに最近は、「ちょっとうつっぽくてねえ……」などと
かる〜く会社を休んだりする人も少なくない。
ちょっと違うと思うんだけど……ということも多い。
ただ、そういう人も何らかの「うつ的病理」を抱えていることも事実だ。
一部のうつの人に「ニセうつ」だと攻撃されながら、
抗うつ薬と抗不安薬を飲みつつ頑張っている上野氏には敬意を表したい。
しかし、ある程度時間を自由に使えるジャーナリストだからこそ
彼のような生き方もできるのではないか。
定時に出社する……ということは、たとえ軽症でも、
うつの人にはかなりこたえるものだ。
私自身も会社を辞めて、自営の身である。だから不調のときは夕方まで寝ていたり
逆に調子がいいときは徹夜したり……ということができる。
最近はうつ病も多様化している。非定型うつという厄介(?)な分類まである。
そんな中で、ある意味ではうつの人には厳しい苦言を呈しているのが本書だ。
その勇気は大いに評価したいし、賛同もできる。
しかし、頑張って社会人でありたくてもできないぐらいつらい人もいる。
「うつ」の世界ではそれなりに影響力を持った人だけに、
そういう、うつのつらさもすくい上げるだけの「優しさ」も欲しかった。
うつ真っ最中の人ではなく、長引いてる人、「うつかも」と思っている人はぜひ読んでほしい。