『トライガン』で有名な内藤泰弘さんの新シリーズ第二作目。ある日のこと
突如出現した異界によって呑み込まれたニューヨークに代わって現れた、
異形の跋扈する霧の街「ヘルサレムズ・ロット」。渦巻く危険とともに莫大な
利益をももたらしうるこの街には、異界の怪物たちの他に移民やマフィアや
新興宗教なんかもひしめいているらしく日々騒動の連続で、治安はかろうじて
「ライブラ」という超人集まる秘密結社によって維持されているのでした、
というお話。
1巻を読んで最初に印象的だったのは、怪物と人間とが共生している霧の街
という設定と、その光景。人間たちが意外にのほほんと送っている生活の中、
異形が霧をくぐって平然と通り過ぎて行き、別にお互い騒ぎ立てることもなく、
という風景に、ふつふつと興奮させられるところもあれば妙な心地よさを
感じるところもあって、不思議な魅力があると思いました。
内藤さんといえばその作風の一つに『トライガン』の頃から続く独特の
セリフ回しがあると思うのですが、その特徴と今作の世界観との相性は、
実はとても良い気がします。異界と混じり合い、敵だけじゃなくてそもそも
世界そのものがわけのわからない混沌と化して、まともなままじゃちょっと
生きていけないこの感じ。そりゃいちいちセリフも絶叫されるし、そこに
すごみもこもるというものだな、と。
あとこの漫画、色んな設定や小ネタ、用語なんかがいちいちいい感じに
大げさで、すごく輝いてます。異界の顔役である怪物とか、十三人のものすごく
強い吸血鬼とか、吸血鬼対策の専門家でめちゃくちゃ呪われてて本人は運が
良いから助かってるけど周りが被害受けまくりの人とか、細かいとこだと
異界に行ったときの「今週の生還率は12%」みたいな描写とか、もともと
色んな引き出しのある作家さんだと思うのですが、それがこのなんでもありの
世界観に刺激されてずるずる引き出されてるようですごく楽しいし、その
一つ一つが魅力的かつ変に説得力あり。キャラクター以外のとこでもものすごく
魅せてくれるのです。特にチェスと将棋が合わさったと説明される架空の
盤上競技「プロスフェアー」を前述の異界の顔役と戦わせる描写は最高でした。
「なんだよその駒。狂戦士って。なんだよ戦域の属性って。でもおもしれえ」
という。
ともかく、作家性とこれ以上なく相性の良い舞台が整い、大小のハッタリが
これでもかと連続で炸裂する痛快な作品に仕上がっています。個人的には
『トライガン』より好きかもしれない。特異な雰囲気と熱さが同時に欲しい、
それにやられたい、という人におすすめします。