連続殺人犯となる主人公の心理学的な設定は今観ると表面的な物ですが、ストーリーよりも映画の撮り方その物がフィルムや映画に対するフェチ感に溢れていて(毒々しいイーストマンカラー、映画内映画、撮影カメラに対する偏愛、e.t.c.)強烈です。
俳優では主演のカール・ハインツ・ベーム(ロミー・シュナイダー主演「プリンセス・シシー」の皇太子役)と被害者を演じるモイラ・シアラ(子供の頃から何度も教育テレビで観た同じパウエル監督による「赤い靴」のヒロイン)コンビが、本作と良く比較されるヒチコック監督「サイコ」の元青春スター:アンソニー・パーキンスと往年の名娘役ジャネット・リーと同じく昔日のネームバリューを反転させた意外性の有る配役で興味をそそります。特にベームは汚れ役ながら観客の同情・共感を呼べる繊細な演技が見事です。
連続殺人者物として主人公がだんだん己の欲望に抗しきれなくなり、身近な人物を獲物に選んで破滅の道へ至る過程が上手く描かれています。
個人的にはトマス・ハリスの小説「レッド・ドラゴン」の設定が今作とかなり被る事の発見と、ヒロインのアルコール依存症の母親役がフィクション中に良く表れる鋭敏な感覚を持った盲人として恐ろしげに描かれている点が印象に残りました。
酷評された公開当事のフィルム時代は秘密の映像アーカイヴを持とうとすると主人公の様に財力と映画技師としての特別な技量を必要としましたが、映像を集め観る事の手段と誘惑が遥かに多い現代の方が主人公に共感出来る人間が多いのかもしれません。名作です。